132 著作権との違い

著作権も意匠権と同じように、いわゆる知的財産権といわれますが、意匠権のような工業所有権とは、対象とする著作物はもちろんのこと、その権利の保護の仕方も全く異なります。著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」(著作権法第二条第一項第一号)とされ、「『美術の著作物』には、美術工芸品を含むものとする。」(著作権法第二条第二項)とされています。意匠法第二条第一項の「美感を起こさせるもの」と違うようで美術にかかわるので似ているようでもあります。次に、権利の発生の仕方や保護の与え方ですが、著作権は著作物が創られた時点で自動的に生じます。権利取得のための、或いは著作物と認めてもらうための、登録手続きなどは一切不要です。これを無方式主義といいます。保護を求めるためには、その旨(著作物である、著作者である、不許複製、違法コピー禁止など)主張したり、明示しなければなりません。そして、正当であれば、必要に応じて、損害賠償の請求や刑事告訴ができるのです。
このように制度としては全く異なるものですが、それでも意匠法第二十六条によれば、意匠権は著作権と抵触する場合があるとしています。同じアイデアでも、意匠権の対象や著作権の対象となり得るのです。意匠権は、国家の産業政策上の観点から行政処分によって権利を発生させます。
しかし、著作権は著作者の精神的表現に関し、著作者の人格的・財産的利益を保護するために認める権利である、といえます。
さらに権利の性質から見ると、意匠権が絶対的独占権であるのに対して、著作権は相対的独占権である、という違いがあります。例えば、甲が意匠権を持つ美的デザインAと類似の美的デザインBを、他人である乙は、原則的に甲の許諾なしに実施すれば、甲の意匠権を侵害したことになります。美的デザインBは、乙自身が創作したものであって、美的デザインAを模倣したものではなくても、美的デザインAと類似のBに対する甲の権利は、意匠制度として絶対的なものなのです。先に出願したかどうか(先願主義)が絶対性を担保しているものなのです。逆に例えば、甲が創作した美術品Cと類似の美術品Dを、他人である乙が勝手に創作しても、必ずしも甲の著作権の侵害にはなりません。乙が美術品Cを意図的に模倣したのでなければ、美術品Dもまた乙の著作物なのです。どちらが先に創作したのかも、問題にはなりません。これが相対的独占権といわれるものです。
美術に関わるアイデアを創ったときに、それが意匠として保護を受けることができる要件を満たすのであれば、意匠登録を受けるべきです。なぜなら、無方式主義の著作権に比べ、より安定した確実な権利にすることができるからです。但し、意匠登録を受けることができても、できなくても、著作者として著作権を主張することを妨げることにはなりません。なぜなら、全く別の観点から保護をする制度であるからです。ここで順序を間違えないようにしなければなりません。もし、著作物である美術品の公表を先にすると、意匠登録の要件である新規性を失い、意匠登録を受けることができなくなる場合があります。
意匠などの工業所有権で保護する対象は、思想やアイデアであるのに対して、著作権はそれらの表現が保護する対象になっています。この違いはなかなかむずかしいものです。
お悩みでしたら、どうぞ専門家にご相談ください。