214 創作の非容易性
「意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたときは、その意匠については、前項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。」(意匠法第三条第二項)【説明】既に広く知られた形態に基づいて、当業者であれば誰でもが容易に創作できた意匠は、創作性が低く、登録して保護する意義はありません。意匠法第一条の法目的である創作の促進や産業の発達を阻害することになるからです。
では、どんな場合に「容易に創作できる」と判断されてしまうのでしょう。
特許庁の審査基準では、以下の六つの類型が示されています。
(1)置換の意匠
公然知られた意匠の一部を、当業者にとってはありふれた手法で、他の公然知られた意匠に置き換えて再構成したに過ぎない場合をいいます。
(2)寄せ集めの意匠
複数の公然知られた意匠を、当業者にとってはありふれた手法で、寄せ集めて再構成したに過ぎない場合をいいます。
(3)配置の変更による意匠
公然知られた意匠の一部の配置を、当業者にとってはありふれた手法で、変更して再構成したに過ぎない場合をいいます。
(4)構成比率の変更又は繰り返される単位の増減による意匠
公然知られた意匠の全部又は一部の構成比率を変更したり、繰り返される単位の数量や方向を増減したりする、当業者にとってはありふれた手法で、変更して再構成したに過ぎない場合をいいます。
(5)そのまま表しただけの意匠
公然知られた形状、模様、色彩、又はこれらの結合を、ほとんどそのまま、物品の形状、模様、色彩、又はこれらの結合に表す当業者にとってはありふれた手法で創作する場合をいいます。
(6)商慣習上の転用による意匠
当業者にとって転用の商慣習というありふれた手法がある場合、非類似の物品の間で意匠を転用する場合をいいます。例として、自動車とミニチュアカーという非類似の物品の間で、自動車の意匠は商慣習としてミニチュアカーに転用されます。このミニチュアカーの意匠は、自動車の意匠とは物品が非類似のため、新規性はあることになりますが、容易に創作できるものと判断されます。