212 工業上の利用性

意匠法では、「工業上利用することができる意匠の創作をした者は、次に掲げる意匠を除き、その意匠について意匠登録を受けることができる。」(第三条第一項柱書)としています。
【説明】この要件を満たすためには、出願されたデザインは、①(意匠法で定義した)意匠であること、②意匠が具体的であること、③工業上利用できること、が求められます。

まず、意匠法第二条第一項の定義から、物品を対象にすること、物品自体の形態であること、視覚に訴えること、美感を起こさせること、が必要です。物品として認められない例には次のようなものがあります。
●不動産:建物や土地に固定された組立て式バンガロー
●固体でないもの:電気や光、気体や液体など固有の形態を持たないもの
●通常の取引で独立の製品ではないもの:独立して取引されていない「靴下のかかと」は物品としては認められません。但し、特徴のある靴下のかかとは、物品を「靴下」として部分意匠を権利化できる可能性があります。
なお形態とは、物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合をいいます。
次に、具体的であるためには、物品の使用目的や用途・機能、そして形態が直接的に導き出せる出願でなければなりません。
工業上利用できるためには、工業的技術を利用して同一物を反復して多量に生産し得る必要があります。工業上利用できると認められない例には次のようなものがあります。
●自然物:自然岩をそのまま置物にしたものは、工業的技術を利用していません。但し、自然岩を模して樹脂などの工業材料で多量に成型した置物の形態は意匠といえるでしょう。
●純粋美術に属する著作物:絵画、彫刻、写真などの著作物は、工業的技術を利用して同一物を反復して多量に生産することを目的に製作されたものではないためです。但し、これらの著作物の複製をカレンダーの図柄にあしらうなどは意匠といえるでしょう。