423 先使用

意匠登録出願をして登録を受けた意匠権者は、その登録意匠を原則的に独占排他的に実施できる(意匠法第二十三条)ことはご理解いただけたと思います。ここでは、意匠権者以外でもその登録意匠を実施できる例外的な場合がありますので、それを見ていきます。意匠権の行使に際して注意が必要となる例外です。

「意匠登録出願に係る意匠を知らないで自らその意匠若しくはこれに類似する意匠の創作をし、意匠登録出願の際、現に日本国内においてその意匠又はこれに類似する意匠の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者は、その実施又は準備をしている意匠及び事業の目的の範囲内において、その意匠登録出願に係る意匠権について通常実施権を有する。」(意匠法第二十九条)
【説明】これは、自ら同じ意匠を創作した者は意匠権者とその権利を公平に保護されるべきであるという考えに立っています。次に、創作した者と意匠権者との間でどちらが勝てるか、でも先願主義の考え方が公平に援用されます。具体的には、意匠権者の出願より先に実施又は準備をしているのであれば、意匠権者といえども、その創作した者による実施を排除できないのです。逆に意匠権者の出願より後で実施又は準備をしているのであれば、例え出願したとしても、先願であることの登録要件を満たせず登録されないのと同様です。その者による実施は意匠権者により排除されます。

こうして自ら同じ意匠を創作して、かつ意匠権者の出願より先に実施又は準備をしていれば、意匠権者以外でも例外的に正当な通常実施権を有するのです。これを先使用権といいます。このような先使用権は、特許発明や実用新案の制度でも認められています。
なお、意匠権では、意匠法第二十三条により、創作した意匠の類似範囲の実施まで意匠権の範囲として認められますが、先使用権でも、認められるとされています。意匠権と公平に保護されるべきという考えに立っています。