311 出願の手続き

意匠を保護してもらうためには、特許庁に対して意匠登録出願という一定の出願手続をしなければなりません。
ここでは、それらの出願の手続きについて、もう少し詳しく、誰が、いつ、何を手続きするのか、を見ていきます。

(1)誰が手続きするのか
出願の手続きについては、意匠登録を受ける権利を有する者又は意匠登録を受ける権利を承継した者が、出願人(いわゆる名義人)となって出願手続きをすることができます。
意匠登録を受ける権利は、意匠を創作することにより生じ、創作者に自然に帰属します。従って、創作者自身が出願人(いわゆる名義人)となって出願手続きをすることができますし、創作者から意匠登録を受ける権利を承継した人や企業が、出願人(いわゆる名義人)となって出願手続きをすることができます。
関連意匠として出願するものは、本意匠の出願人と同じ出願人でなければなりません。
秘密意匠を請求するものは、出願人でなければなりません。

(2)いつ手続きするのか
同一又は類似の意匠であれば、先に出願したもののみが、意匠登録を受けることができることは、意匠法第九条第一項でご理解いただいたとおりです。この先願主義のため、出願手続きは一刻を争わなければなりません。
と同時に特許とは異なり、注意しなければならないことがあります。特許の場合には、出願する前に発明は公表しないようにすることはできますが、意匠の場合には事業の展開によっては、出願する前に宣伝したり、販売を始める場合があります。この場合には、出願時には公然と知られた意匠になってしまい、保護を受ける要件を満たさないことになってしまいます。意匠法第四条では、一定の期間内(公然と知られた日から6月)及び一定の条件の範囲をもって、出願前公表の救済規定を設けています。出願する前に公表に至った場合、この救済制度を利用する手続きも忘れないようにしなければなりません。
関連意匠として出願する場合には、本意匠の出願と同日以降から、本意匠の意匠公報の発行前日までに出願しなければなりません。
秘密意匠を請求する場合には、出願と同時に請求するか、又は審査で登録の査定を受けた後、登録料を納付すると同時に請求することができます。

(3)何を手続きするのか
基本的には、手続きごとの書面を作成し提出し、手続きごとの所定の手数料を特許印紙で納付しなければなりません。
出願の手続きは、願書を提出し、図面を添付しなければなりません。写真により意匠が明りょうに表される場合には、図面に代えて写真を提出することができます。省令で定める場合には、図面に代えてひな形又は見本を提出することもできます。
秘密意匠を請求する場合には、出願と同時又は登録料納付と同時に、願書に添付すべき図面などを密封し、かつ、「秘密意匠」と朱書して請求することができます。

特許庁では出願者に対して、事前に意匠公報を調査するように呼びかけています。既に公知となっている意匠と同一又は類似の意匠は保護を受けることはできないのですから、無駄に終わってしまう出願を節約する意義があります。添付する図面は意匠の権利範囲を決定する最も重要な書面なので、意匠公報から図面作成の要領を学んでほしいとしています。

専門的なことになりますが、特許庁の審査官から拒絶理由通知を受けた場合には、意見書を提出して反論することができます。

このように出願の手続きは、特許制度とほぼ同様な手続きとなっています。特許制度と異なる点は、出願公開の制度がないことです。これは、意匠の審査は出願から約7ヶ月と早いので、意匠公報による公開も早いため、特許のように出願から一律1年6月で公開する必要性がないためです。もう一つ特許制度と異なる点は、審査請求をしなくても全ての出願が審査されることです。これは特許の場合には、権利化するかどうか、権利化するとすればどういう権利体系にするかなど、時間をかけて検討を要する場合があります。そこで審査が請求された場合に出願された発明を審査することにしています。これに対して、意匠は外観のデザインであるので、それほど時間をかけないで権利化するか否か、即ち出願するか否かが決められることが多いためです。