411 意匠を実施する権利とは
意匠登録を受けることで、その意匠を独占排他的に業として実施する権利が生じることを、これまでの説明でご理解いただけたと思います。ここでは、その意匠権をもう少し詳しく見ていきます。意匠権は、「意匠権者は、業として登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有する。」(意匠法第二十三条)とされています。こうして意匠を「実施する」権利が独占排他的なものとされています。特許・実用新案と異なるのは、類似範囲(右図)まで専有されることです。これは意匠権というものが出願に係る意匠と同一範囲のみに限定すると、わずかに外形を変えるなどで、他人が容易に模倣することができてしまうからです。
次に、「実施する」とは、具体的にどういう行為が該当するのか、見ていきます。
「『実施』とは、意匠に係る物品を製造し、使用し、譲渡し、貸し渡し、輸出し、若しくは輸入し、又はその譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡又は貸渡しのための展示を含む。)をする行為をいう。」(意匠法第二条第三項)と定義されています。単にデザインを創作した商品の製造という狭い範囲にとらわれず、経済活動の様々な場面が意匠の実施として、広くとらえられています。
次に、意匠権の範囲を、どのように判断するのか、を見ていきます。
「登録意匠の範囲は、願書の記載及び願書に添附した図面に記載され又は願書に添附した写真、ひな形若しくは見本により現わされた意匠に基いて定めなければならない。」(意匠法第二十四条第一項)
「登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は、需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものとする。」(意匠法第二十四条第二項)
この第二項は、意匠の侵害事件における意匠の類否判断を明確化するために、最高裁判例等の説示に基づき、平成18年の法改正で追加された規定です。他人の行為があなたの意匠権を侵害しているか否か、逆にあなたの行為が他人の意匠権を侵害しているか否か、判断するに際しての意匠の類否判断がこれに基づくことになります。詳しくは、新規性判断における類否判断と同様の手法で判断することになります。