217 登録を受けることができない意匠
「次に掲げる意匠については、第三条の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。一 公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある意匠
二 他人の業務に係る物品と混同を生ずるおそれがある意匠
三 物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠」(意匠法第五条各号)
【説明】まず、日本や外国の元首の像や国旗を表す意匠は、国や元首の尊厳を害する場合があり、公の秩序を害する恐れがあるもの(一号)と認められます。また、人の道徳観から逸脱して不当に羞恥心や嫌悪の念を起こさせるような意匠は、善良の風俗を害するおそれがあるもの(一号)と認められます。意匠制度の目的からこれらは、登録を受け保護を受けることはできません。
次に、他人の著名な標章やこれと紛らわしい標章を表した意匠の物品は、その他人又は団体が業務として製作したり、販売したりする物品と混同を生じる恐れがある(二号)と認められます。このような意匠は、商標制度の観点から、不正競争防止の観点から、いたずらに紛争を生じさせるものとして、登録を受け保護を受けることはできません。
次に、物品の機能を確保するために不可欠な形状は、機能を実現する手段に関する技術的思想の創作として、特許又は実用新案として保護されるべきものです。そのような技術的思想に意匠として独占排他的権利を与える場合、特許又は実用新案制度で与えられる独占排他的権利と重複を生じ、制度破綻するため、登録を受け保護を受けることはできません。
「機能を確保するために不可欠な形状機能」とは、具体的にはどんなものか、見ていきます。一つは、機能を確保するために必然的に定まる形状がそれに当ります。
例えば、衛星放送の受信アンテナは、電波受信機能を確保するために、必然的に放物線形状が選ばれています。もう一つは、物品の互換性確保のために標準化された規格などにより、定められた形状がそれに当ります。例えば、電気差込接続のためのコンセントとプラグは、JIS C 8303で形状と寸法が標準化され互換性と安全性が確保されています。