322 図面

出願の手続きの説明で、願書を提出し、図面を添付しなければならないことは、ご理解いただけたと思います。
ここでは、この図面についてもう少し詳しく見ていき、出願人様が出願手続きを依頼される際に、ご用意いただく資料やデータをご理解いただきたいと思います。
基本的には、手続きは特許庁コンピュータにオンラインで手続きします。紙の書類で手続きする場合には、特許庁コンピュータの磁気ディスク上に記録を求めることが必要になり、別途手数料が必要になります。また、紙の書類の様式はA4縦で横書きに統一されています。

図面を作成する上で注意することは、実際の商品の形態(形状、模様、色彩とこれらの組合せ)をその通り図面にしても、意匠権の範囲が狭くなってしまい、デザイン創作者の意図が満たされない場合があることです。このため権利範囲が広くなるように、他人が模倣しにくい図面の表し方に工夫が必要になります。具体的には、デザインの特徴となるポイントを抽出してこれに絞って、図面を作成する必要があります。実際の商品の通り、例えば製作図をそのまま図面にしても、生産する便宜上の細かい形態まで図面に表れてしまい、デザインの特徴となるポイントがぼけてしまいます。そうすると、ささいな形態を異なるものにするだけで、新規な意匠の創作と認められる可能性があり、せっかく意匠登録を受けても容易に模倣され、それを排除できない弱い意匠権になってしまうのです。

次に図面作成の様式上の要件を見ていきます。
(1)図の構成
立体を表す場合には、正投影図法により正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図と底面図の6種類の図で構成し、各図の上部にその図の種類名称を記載します。各図は同一縮尺で、横150mmx縦113mmを超えない図とします。一つの図を2ページ以上に亘らせて配置してはならず、二つの図を横にならべて配置してはなりません。図面に代えて写真を用いる場合も同じです。正投影図法以外では、等角投影図法又は斜投影図法(キャビネット図又はカバリエ図)も可能ですが、願書の意匠の説明の欄に、斜投影図法の種類と傾角を記載しなければなりません。
これらの図面だけでは、意匠を十分に表現できないときは、展開図、断面図、切断部端面図、拡大図、斜視図や使用状態を説明する図などを参考に加えることができます。
なお、一般の製図で記入される中心線や引き出し線、符号や文字などが意匠を構成しない場合には、これらを記載してはいけません。

(2)部分意匠
図の構成は全体意匠と同じですが、意匠登録を受けようとする部分を実線で描き、その他の部分を破線で描くなどの方法で、受けようとする部分を特定することができます。この場合に、願書の意匠の説明の欄にその特定方法を記載しなければなりません。

(3)分離する物品
ふたと本体、さらとわんのように分離することができる物品で、組み合わされたままでは、意匠を十分表現できない場合には、組み合わされた状態の図のほかに、ふたと本体のそれぞれに、(1)による図面を加えなければなりません。

(4)複数の構成品
積み木のように構成する各片の図面だけでは使用の状態を十分表現できない場合には、出来上がり又は収納の状態を表す斜視図を加える必要があります。

(5)動いたり開いたりする物品
動いたり、開いたりする物品で、その動きや開きの前後の状態の図面を描かなければ意匠を十分表現できない場合には、その動きや開きによる意匠の変化がわかるような図面を作成しなければなりません。なお、機能に基づいて形状が変化する玩具などの動的意匠の場合、願書の意匠の説明の欄にその旨と機能の説明を記載することで、全ての状態の図面の作成を省くことができます。