421 間接損害

意匠権者に専有される登録意匠とその類似意匠を、第三者が、意匠権者の許諾を得るなど、正当な権原を持たないで業として実施すれば、意匠権を侵害したことになります。実施という行為が、経済活動の様々な場面で広くとらえられていることは、意匠を実施する権利で見たとおりです。これらの行為は、いわゆる直接侵害といわれます。
しかしながら、意匠権を直接に侵害しているとはいえない行為であっても、直接侵害を惹起する蓋然性が極めて高く、そのような行為を放置すれば意匠権の効力を失わせる場合があります。意匠法では、侵害の予備的又は幇助的行為のうち、直接侵害を誘発する蓋然性が極めて高い一定の行為も意匠権の侵害とみなすことにしています。これが、いわゆる間接侵害です。

ここでは、この間接侵害について詳しく見ていきます。間接侵害に当る行為も、経済活動の様々な場面を想定して、次のように定義されています。
「次に掲げる行為は、当該意匠権又は専用実施権を侵害するものとみなす。」(意匠法第三十八条柱書)
「一  業として、登録意匠又はこれに類似する意匠に係る物品の製造にのみ用いる物の生産、譲渡等(譲渡及び貸渡しをいい、その物がプログラム等である場合には、電気通信回線を通じた提供を含む。)若しくは輸入又は譲渡等の申出(譲渡等のための展示を含む。)をする行為」(意匠法第三十八条第一号)
【説明】「意匠に係る物品の製造」とは、正当な権原がなければ侵害行為に他ならず、侵害行為のみに用いる物に係る経済活動も侵害とみなすとしています。ここでいう「のみ品」とは、いわゆる専用品といわれます。
「三  登録意匠又はこれに類似する意匠に係る物品を業としての譲渡、貸渡し又は輸出のために所持する行為」(意匠法第三十八条第二号)
【説明】第一号が、「意匠に係る物品の製造に用いる」という、登録意匠との間接的なつながりでしたが、ここでは登録意匠に係る物品そのものという、登録意匠と直接的なつながりであるけれども、単に所持することだけでも侵害とみなすとしています。模倣品対策強化の観点から、侵害行為を禁止する実効性を高め、侵害物品の拡散を図る意図です。