143 不正競争防止法では模倣を防げないのか

不正競争防止法第二条第一項第三号では、「他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為」を不正競争行為としています。この不正競争行為により、自分の営業上の利益を侵害される場合には、差し止めを請求することができ、他人の営業上の利益を侵害した者は、損害を賠償する責めを負う、としています。また、刑事罰も科せられることで、商品のいわゆる外観の模倣を防ぐことにしています。
不正競争法による保護は、意匠登録を受けていない意匠も保護の対象にしている反面、保護の範囲や強さが限定的であり、意匠法のような強力な保護を受けることはできません。不正競争法では誰もが容易に保護を受けることができる反面、保護は弱いものにとどまる、といえます。
主に三つの相違点があります。一つ目は、不正競争行為の「模倣」という行為ですが、「他人の商品の形態に依拠して、これと実質的に同一の形態の商品を作り出すこと」(不正競争防止法第二条第五項)と狭い意味にしています。これに対し、意匠では、他人の商品に依拠していなくても(模倣していなくても)、他人の意匠に類似していれば(同一でなくても)、侵害とされます。意匠の場合には、侵害とされる範囲が広いのです。
二つ目は、故意又は過失によって不正競争を行った場合に損害を賠償する責めを負い、意匠も故意又は過失により侵害した場合に損害を賠償する責めを負います。但し、不正競争では賠償を請求する者が故意又は過失があったことを立証しなければなりません。他方、意匠では過失があったことは推定され、賠償を請求する者の立証責任は転換されています。意匠権の存在は、意匠公報で公開されているのであるから、それを知らないで(過失で)侵害に及んだと推定されるのです。意匠権の強力さをご理解いただけると思います。
三つ目は、権利の存続期間です。不正競争では、最初に販売されてから3年経過した商品は、模倣しても不正競争にはなりません。意匠では、意匠登録から20年は、意匠権が存続します。意匠権の時間的な大きさもご理解いただけると思います。